温泉空想

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ひとつ大きなことをこなしてから、夜思いつきで温泉へ出かける。

札幌市の南寄りに住んでいると定山渓温泉や小金湯温泉が近くて割とすぐに行けてしまう。

6月=初夏のこの時期の温泉は最高である。いや真冬に雪に囲まれながら入る露天も最高だけど。いや秋も‥

要するにいつでも最高なのだけど、今夜の湯は特によかった。

 

いつもより硫黄臭が強め。ふと口永良部島など最近の噴火のことを想い出す。そのせいか、ぬるっとした湯は身体を包むように滑らかにまとわりついてくる。

外の風は涼しく、適温の湯は身体・頭は爽やかな夜風‥と最高の組み合わせとなる。

 

緑色の証明に寄ってうるさく飛んでいる羽虫たちも、その色に照らされたおかげでまるで蛍のような綺麗な色に見える。普段はうっとおしい虫たちが偶然の光によって美しく夜を彩る。

露天のすぐそばを流れる川の音が絶え間なくざざざと聞こえる。眼を閉じるとまるで川に浸かっているかのような感覚に陥ることができる。

 

どこかで鳥がきょきょきょっと鳴いた。こんな時間にもまだすることがあるようだ。避けるかのように虫が露天に飛び込んだ。

そしてじたばたする光景をぼんやりと見つめていた。

夜空にはいくつかの星。

 

風呂上がりに雑魚寝用の休憩室へ。畳に腰を下ろし、ややぼろぼろとした壁に寄り掛かると、おもむろに団扇を取り出してぱたぱたと煽いだ。

開け放たれた休憩室の窓の網戸の向こうは真っ暗で何もうかがい知ることはできなかった。

広間には家族連れやおばあちゃんたちが何組か、思い思いの格好で休憩している。あるおばあちゃんは寝そべりながら煙草をふかしファンタグレイプを飲んでいる。すぐに旦那が合流したが、さきほど露天で隣り合わせた優しそうなおじいちゃんだった。そこへ少し太った娘も帰ってきた。

 

僕はひとりテーブルの上に無造作に置いた左手を支点にして団扇をあおぎつづけ時たま眼を閉じた。この感覚がとても懐かしく、遠い昔を想い出せそうな「きっかけの断片」みたいなものがそこらにたくさん散らばっていた。その一歩手前の空想のようなものが、妙に心地よい。

 

隣のテーブルからはいなくなった家族のラーメンのどんぶりやら灰皿やらが残され、それを額に汗をかいているバイトの30歳くらいのお姉さんが片づけにくる。やや早足ではあるものの、1回で片づけることはかなわず3回に分けてやっと片づけた。何気ないことも労働としての時間が確かに存在していた。

 

1番最後に風呂からあがってきたギャル風の女2人とその母、母は見た目少し若く見える。ギャルは眉毛がなく、しかし僕の記憶の統計によれば眉毛が無いギャルというのはコギャル世代の終焉と共に死滅したはずで、ということは若く見えて案外29歳辺りなのかもしれぬ。茶髪だが金髪に若干近いところからもその片鱗がうかがわれる、、などと勝手に想像した。ギャルは細い体の上に白いTシャツを着ていた為、明るい光の下でうす青い下着が透けて見えていた。僕はそれを3秒ほど見つめてしまい、うなだれた。そしてまた目を閉じては元の世界へ戻って行った。

 

札幌祭が過ぎ、もうすぐ本格的な夏がやってくる。札幌は露の気配もなく、天気は晴れ続き。気温も高めで推移している。

今年の夏はどんな夏になるのだろう。胸躍らせるあのきらきらとしたナツノヒカリは、まだ僕に飛び込んできてくれるのだろうか。

少し確信のある現実世界の危うげな扉の前を行き来しながら、控えめに貪欲に光を摘み取っていたずらに消費してしまう哀しさを愛そうと感じた。

 

 

2015 初夏。

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